聲明付「舞楽 算命楽」

 
 

聲明付「舞楽 算命楽」   

日独交流150周年<創造する伝統>委嘱作品


算命楽は現在知られている他の舞楽にはない しきたりに則って奉納される、きわめて特異な演目である。拊在栖(ふあるす/Fuarusu)と呼ばれるレインスティックに似た棒を持って舞われるのもこの算命楽のみだが、何より舞人と楽人達が東方と西方の二手に別れ、最初に与えられた数を交互に計算しながら奉納される点がその大きな特徴だろう。

すなわち、双方は、それぞれに最初に与えられた数0と1から始め、互いの数の「足して10で割った余り」を交互に計算し、その結果を新たに与えられた数として更新していくのである。舞の型や方角、そこで奏でられる旋律や和音(笙)、さらに打楽器のリズムまでもがこの数に従っており、それは、算命楽という舞楽全体が数値を表現する媒体でもあることに他ならない。

言い換えれば、舞や音楽はこの計算過程の「副作用」として視られ、聴かれるものとなる。

このような演算システム、あるいは「数列生成マシンとしての舞楽」が一体どのような宇宙観から生まれたものなのかは定かでないが、古代中国では「算命」という言葉が「計算する」ことであると同時に「運命を占う」ことと同義であったため、国家の天命を知るある種の占いとして奉納されていたのではないかと言われている。

一方、算命楽でのみ使用される拊在栖に込められた無数の小石は精子を象徴したものだという説もあり、舞において高く掲げられた拊在栖は天から種子を充填している様、下方に向けられた拊在栖はそれを四方の大地に向け散布している様だという。すなわち、人々は「種子」の流れを感じながら粛々と続けられる算命楽の舞を奉納することにより護国豊穣を祈ったのだという。

なお、しきたりに従えば、0, 1, 1, 2, 3, 5... と続くはずの数列は、我々の知るフィボナッチ数列の一桁目のことであり、60回目の計算で数列の初期値に戻ることになる。事実、算命楽では東方、西方それぞれが30回、数を更新したのちに奉納は終わる。

すなわち、その後は同じ数列が永遠に繰り返されるので、省略されているのである。

という夢をみた。

    

                                                                                             三輪 眞弘



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創造する伝統 日独交流150周年委嘱作品作曲/振付 三輪眞弘

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